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【調査結果】3人に1人が「気候投票者」。都議選・参院選を前に選挙と気候変動に関する世論調査を実施

  • 執筆者の写真: Maya Nakata
    Maya Nakata
  • 5月26日
  • 読了時間: 9分

更新日:6月6日

約1か月後に控えた、東京都議会選・参議院選を前に、有権者の気候変動に対する関心と投票意向への関連性を探るべく、一般社団法人ジャパン・クライメート・アライアンス(JCA)は、東京大学未来ビジョン研究センター副センター長 江守正多教授の指導のもと、選挙プランナー 松田馨氏(株式会社ダイアログ代表取締役)らの協力を得て、全国 5,000 人を対象に世論調査を実施しました(調査期間:2025 年 4 月 30 日〜5 月 7 日、インターネット調査)。


選挙と気候変動に関する世論調査
選挙と気候変動に関する世論調査

近年、気候変動の影響は「環境」や「エネルギー」の枠を超え、食や災害、健康など幅広い分野に顕在化しています。気候変動の課題解決には個人の行動だけでなく、システムチェンジのための政治的意思決定が重要ですが、これまで気候変動に関して選挙における投票意向を問う調査はほとんどありませんでした。有権者の選挙と気候変動に関する意識を可視化することで、世論と政治において適切な争点化と議論の活性化を目指すべく、調査を実施しました。


調査の結果、気候危機は“遠い環境問題”ではなく、生活への影響を通じて有権者の投票意識に直結し始めていることを示唆する結果が得られました。


調査結果のポイント

  • 現在までに気候変動の悪影響を受けていると考える人は8割を超え、この2〜3年で気候変動の悪影響が大きくなっていると感じる人は72.3%

  • 気候変動の影響として深刻だと思うものは、「農作物の品質や収穫量・漁獲量の低下」(54.9%)が最も多く、次いで「食品価格や電気代」など生活コストの上昇(44.4%)

  • 次の選挙で候補者を支持する際、<エネルギー・環境・気候変動>に「関心を持つ」と回答した人は71.2%

  • 「エネルギー・環境・気候変動」 に関心があり、かつ気候変動対応を強調する候補者に関心を持つ「気候政策関心層」は全体で47.6%

  • 「気候政策関心層」のうち、関心を示す方法として「投票をする」と回答した人は全体で33.1%普段の支持政党より候補者の公約を重視すると回答した人は 全体で27.5%

  • 食品が値上がりしている要因については、気候政策関心層の50.7% が「気候変動などによる農作物の不作」と回答し、そうではない層よりも割合が高い傾向


調査結果


<気候変動の影響>

  • 現在までに、<個人の生活>に対して、気候変動の悪影響を受けていると考える人は85.9%。さらにこれから先のことを考えると、悪影響がさらに増していくと考える人が多い



  • この2〜3年で、個人的な生活に与える気候変動の悪影響が大きくなっていると感じる人は72.3%



  • 気候変動の影響として深刻だと思うものは、「農作物の品質や収穫量・漁獲量の低下」( 54.9%)が最も多く、次いで「食品価格や電気代」など生活コストの上昇(44.4%)、「気象災害によって停電や交通まひなどインフラ・ライフラインに被害が出ること」(31.1%)、「暑さによって外での活動が制限されたり、熱中症のリスクが増大したりすること」(30.1%)だった




<選挙における気候変動への関心>

  • 次の選挙で候補者を支持する際、<エネルギー・環境・気候変動>に「関心を持つ」と回答した人は71.2%

    • 「強く関心を持つ」「少し関心を持つ」を合わせた「関心を持つ(計)」は、「景気・物価高対策」(84.0%)が最も高い

    • 「社会保障制度の見直し」(73.9%)、「エネルギー・環境・気候変動」(71.2% )、「防災・災害対策」(73.7%)±2.7ptで有意差はなく、次いで関心が高いテーマとなっている



  • 「エネルギー・環境・気候変動」に関心を持つ人のうち、次の選挙で気候変動への対応を強調する候補者へ関心を持つ人は66.9%、全体で割り戻すと47.6%が「気候政策関心層」




  • 「気候政策関心層」のうち、候補者への関心を示す方法として 「投票をする」と選択した人は69.6%、全体で割り戻すと33.1%と3人に1人が「気候投票者」




  • 「気候政策関心層」は全体の傾向と比べ、普段支持する政党よりも掲げられた公約を重視する傾向

    • 「気候政策関心層」のうち、『A(普段支持する政党以外の候補者であっても、投票を検討する)に近い』と回答した人は57.7% (全体で割り戻すと27.5%)



      

  • 「気候政策関心層」が関心を持つ時事テーマは、「米価格の高騰」(91.9%)が最も高い。 

    • 次いで「道路陥没などインフラの老朽化」(91.8%)、「アメリカの関税」(87.3%)、「消費税減税」(80.6%)となっている

    • Q10のいずれのテーマにおいても関心を持つ割合が高く、時事テーマへの関心が高い傾向にある




<食・物価高と気候変動>

  • 気候政策関心層※では「食品」(87.2%)が最も高く、次いで「光熱費」(75.9%)、「ガソリン代」(48.1%)、「日用品」(37.8%)となっている。



  • 食品が値上がりしている要因については、気候政策関心層の50.7% が「気候変動などによる農作物の不作」と回答し、そうではない層よりも割合が高い傾向にある



<気候変動に関する政治の認識>

  • 気候変動に対して多くの責任を負っていると考えられているのは「企業」と「政治家」

    • 責任が「非常に多い」「多い」を合わせた値は「企業」(44.9%)が最も高く、次いで「政治家」(41.8%)となっている



  • 政府が気候変動対策を積極的に行っているという認識はさほどされていない

    • 政府が気候変動対策を「十分に行っている」(1.3%)、「ある程度行っている」(17.5%)を合わせると18.8%となっている



  • 他国の気候変動への積極性に関わらず、日本の気候変動対策は「積極的に行うべき」という回答が過半数

    • 「はるかに積極的に行うべき」「より積極的に行うべき」を合わせた「積極的に行うべき」という回答は、他国が積極的に行う場合は55.9%、他国が消極的に行う場合は56.7%となっている

    • 他国が積極的に行う場合と消極的に行う場合の回答は、同じ傾向となっている



専門家コメント

松田馨氏(株式会社ダイアログ代表取締役/選挙プランナー)

メディアの世論調査で必ず入る「憲法改正」「外交・安全保障」「こども政策・少子化対策」といった政策よりも「エネルギー・環境・気候変動」に「関心を持つ」と答えた人の割合が多いというのは、非常に高い関心が寄せられているなという印象を受けました。


この調査ではできるだけニュートラルに、政策への関心から投票というアクションに関わる選択肢まで用意されています。実際に何をもって投票先を決めたか、というのは正確には把握しづらいですが、約3人に1人が「気候投票者」、さらに「普段支持する政党以外から立候補していたとしても投票を検討する」という結果には正直驚きました。


今回、物価高対策というものが非常に大きな参院選の争点になると言われている中で、物価高と気候変動における有権者の関心が一定リンクしていることや、物価高の原因の一つとして気候変動が意識されているというのは意外な数字でした。


また、選挙の当落への影響を考えますと、無党派層がどういった投票行動をするのかが非常に大きなポイントになります。その無党派層の中でも、半数近くが「気候政策関心層」という結果で、高い関心が寄せられています。


年代別に見ると、いわゆる団塊ジュニア世代、また就職氷河期世代と呼ばれる40〜50代から気候政策への関心が高まっています。人口ボリュームで見たときに、団塊世代の次に大きなボリュームゾーンになっており、年代に伴って投票率が上がっていきますので、投票者全体に占める割合がだんだん大きくなってくる。そういった層が気候政策に関心を持っているということは、今後の選挙においても、投票先の選択に影響を与え、それによって政党、そして候補者の当落というものが変わってくる可能性というのは十分に考えられるような数字だと思いました。


今後の都議選や参院選のアジェンダセッティングにもよると思いますが、一定程度、関係者に影響を与える可能性があるという数字は十分出ているのではないでしょうか。


江守正多教授(東京大学未来ビジョン研究センター副センター長)

解釈として注意しなくてはいけないのは、「気候政策関心層」や「気候投票者」は気候変動にだけ関心があるわけではなく、他の争点にももちろん関心があるということです。それでも普段の社会調査で、単一回答やそもそも選択肢にも入っていない、ともすると見過ごされていた有権者の気候変動に関する関心というものが、ポテンシャルとして、少なくとも他の社会問題と遜色ない程度にはあるんだということが今回示されたことは、一つ意味があったのではないかと思います。他の問題について候補者間で差がついておらず、気候変動に関して差がついていれば、それが投票の動機になることは十分ありうる。そういう人たちが世の中に3割ぐらいはいるということが示されたと言っていいのではないかという風に結果を受け止めました。


近年、記録的な猛暑や大雨の被害が実際に日本でも顕著になってきており、そう感じている人も多いのではないかと思います。今年の夏も、気象庁の長期予報によると平年より暑いという予報が出ています。参院選が7月頃ということを考えると、「今年も暑い」ということが、何らか人々の印象として、投票行動に影響するっていうことはあり得るのかなということも考えさせられるような結果かなと思います。


また、他国が気候変動対策について積極的でも消極的でも、日本は「より積極的に行うべき」という回答が多かったことについては、非常に希望が持てる結果だと受け止めています。アメリカの第二次トランプ政権は気候変動に対して後ろ向きな態度を取り続けています。「アメリカがあんな風だから、もう日本がやっても意味がない、やらなくてもいいんじゃないか」という声がもっと聞こえてくるかと思っていましたが、結果を見ると日本人は真面目な方が多く、しっかりとやっていくべきとお考えの方が多いというのは、勇気づけられる結果だと思いました。


さらに今回の調査で重要なポイントは、いわゆる気候変動という問題を否定している、あるいは極端に懐疑的である人というのは実際には1割ぐらいしかおらず、ネット上の、特にSNSなどで見ている印象とはかなり違うということです。再生可能エネルギーの拡大についても、SNS上では反対している人が目立ちますが、こうして調査をしてみると、多くの人たちが再生可能エネルギーの拡大に賛成しており、必要性の認識が広がっていることが見て取れます。


食品価格の高騰の要因として「気候変動などによる農作物の不作」をあげる人の割合が比較的高かったことについて科学的に補足しますと、今の米の値上がりの主原因とまでは言えませんが、その一部として、2023、2024年の猛暑や、場所によっては水害があり、米の栽培がうまくできなかった地域が実際にありました。また、オリーブオイルやオレンジ、コーヒーやチョコレートなどの輸入作物の品薄や値上がりの原因としても、原産地における、気候変動によって激甚化したと考えられる災害の影響が指摘されています。


素材について

そのほか調査結果の詳細や素材等は下記URLにございます。


調査概要

調査方法:

インターネット調査(調査委託先:株式会社サーベイリサーチセンター)


調査対象:

全国の18歳以上の男女


回収数:

5,000サンプル


調査期間:

2025年4月30日(水)~5月7日(水)


サンプル配分:

サンプルは「令和2年国勢調査」を基に都道府県別、性別、年代別で配分した。


一般社団法人ジャパン・クライメート・アライアンスについて

気候変動の解決のために行動する人や団体を支援し、共創を促すことで気候変動の課題解決に取り組む非営利団体です。気候変動分野のプロフェッショナルの育成、組織基盤の強化、連携の推進を行う3つのプログラムを実施しています。

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